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- 2022.06.20

座ったままエクササイズ 第2回「だら→シャキを繰り返すだけ!オンオフ」

「今回ご紹介するエクササイズも第1回で解説した“椅子の正座”が基本になっています。骨盤を立てて=オン、ゆるめる=オフだけというとっても手軽なエクササイズですが、十分腰回りをほぐすことができますよ!」
※ “椅子の正座” についてはこちら→https://about.angellir.jp/journal/703

①“椅子の正座”→オフの姿勢に

椅子に“椅子の正座”で座り、お腹の力を抜いて上体をゆるめます(=オフの姿勢)。この時、骨盤は寝ている状態。

②オンの姿勢に

骨盤を立てて「椅子の正座」の姿勢に戻ります(=オン)。

オンの姿勢とオフの姿勢、交互に各4回ずつを目安に、慣れてきたら1分ほど続けて。生活の中で集中して行うというよりは、こまめに行うのがベスト。

習慣づけることで、骨盤を立てるための筋肉が鍛えられるだけでなく、腰椎(背骨の下部)が柔軟になります。
 

肩甲骨をゆるめる“マックス腕回し

「日常生活を振り返ってみていただくとわかるのですが、腕を体の後ろ側に回す動作ってめったにしませんよね。背中が丸い状態は、背骨ももちろんですが肩を前に丸めこんでいる状態でもあります。この状態が長く続くことで、肩甲骨周りがこわばってしまうんです。腕をゆっくり回すだけのエクササイズですが、重要なのは“前から後ろへの一方向で行う”こと! 胸を開いて肩甲骨の可動域をグーッと広げるイメージで行ってみてください」。

①“椅子の正座”で座る

椅子に“椅子の正座”で座ります。

②腕を90°前へ

腕を前方、床に対して90°の高さに上げます。体が前に倒れないように注意して。

③腕を前に伸ばす

上体はまっすぐ立てたまま倒さず、肩が動く範囲で腕だけ限界まで前へ突き出します。軽く前へ引っ張られているイメージで。

④腕を上に伸ばす

腕を伸ばしたまま、まっすぐ真上(床に対して180°)に上げます。視線は上げている腕の指先を追います。常に軽く指先を引っ張られているイメージでなるべく大きく動かして。

⑤腕を上に伸ばす

指先を目で追いながら、背後へ大きく回していきます。

⑥腕が真後ろまで来たら止める

回している腕が、真後ろ(床に対して90°)まで来たら、止めます。

⑦腕を後ろに突き出す

ここまですでに可能な限り大きく腕を回しているはずでが、最後にダメ押しでさらに後ろへ突き出します。後ろに引っ張られているようなイメージで。ただし上体は倒さないように注意して、肩甲骨が動く範囲で。

反対側も同様に腕を回します。左右各2回ずつが目安ですが、肩に疲れを感じたら行うように習慣づけるのがおすすめ。肩甲骨を動かすことで、周囲の筋肉や関節の柔軟性がアップし、肩がこりにくくなります。
最初は動かしづらいという人も、続けていくうちにスムーズに動かせるようになってきます。解説通り行おうとすると痛みを感じるという人は、できる範囲から少しずつ伸ばせるようにしていけばOK。
 

田先生の姿勢講座

こまめなメンテナンスで痛みが起こりづらい体に!

腰痛や肩こりで悩んだことがない、という人はなかなかいないですよね。マッサージや整体などに定期的に通っている人も多いのでは。行ってすぐはスッキリしても、数日も経てば元通り……なんてことも。悩みが深い人ほど、改善へのカギは“姿勢”が握っているかも……!? 虎ノ門カイロプラクティック院院長の碓田先生も、実はそのひとりでした。


「私がそもそも“姿勢”に目覚めたのも、実は肩こりがきっかけ。大学3年生の時“姿勢と健康”の講義を受けて、姿勢を見直していくにつれて万年病だと思っていた肩こりが劇的に解消されたんです。もちろん、今でも長時間原稿執筆などに夢中になって肩こりを感じることはありますが、その対処法を身につけたことで、長く悩まされるということがなくなりました。いうなれば、“キャットレッチ”(リンク)などのエクササイズは、歯磨き感覚のメンテナンス。きちんとしなきゃいけないから良い姿勢をしなきゃいけないんじゃなくて、体のためにやったほうがいいことだって、早く教えてほしかったなぁ~!


ところで、人間の体の重さうち、頭が10%ほど、腕が5%ほどを占めています。頭の重さとだいたい同じボーリングの球をずっと手に持っているとかなり疲れてきます。その重さがずっと肩にかかっているので、肩がこるのはむしろ当たり前といえるかもしれません。でも、姿勢の良し悪しでその負荷は大きく変わります。
昔ながらの玩具、だるま落としのだるまの代わりにボーリングの球を置こうとすると、すぐ転がり落ちそうなものですが、実は下の積み木を垂直に重ねているとボーリングの球は落ちません。

積み木のバランスが悪ければ、球は落下するどころか、そもそも載せられません。この積み木を背骨に見立てると……もちろん人間には筋肉やじん帯がありますから転がり落ちはしませんが、頭を支える筋肉に大きな負荷がかかるわけです。そうしたことが肩や腰に起こり、それが痛みとなって現れるんです。


立った状態でものすごく背が丸まっている人とうのは相当のお年寄りでない限り、実はそれほど多くありません。ところが、座るととたんに多くの人が背中を丸めてしまいがち。

難しい話は端折りますが、人は脱力して座ると、背中が丸まりやすい構造をしているのです。しかも座っている時って、デスクワークやスマホの使用、読書など下を向く動作をしていることがほとんどですからね。
日本人は1日平均約7時間座っているそうですが、その間悪い姿勢でいることで体にかかる負荷も増大してしまいます。逆に、良い姿勢でいれば負荷を軽減することができます。“良い姿勢”というと、多くの人が立ち姿をイメージすると思いますが、私が座り姿勢を重視して“椅子の正座”を提案しているのもそんなところに理由があります。
もちろん、7時間ずっと良い姿勢でい続けることは現実的ではありません。まずは1日の中でトータル1時間を目指してみましょう。次第に良い姿勢でいられる時間を伸ばしていくのが理想です。姿勢を改善することで苦痛も減りますし、マッサージや整体に通う頻度も少なくなって、お財布にも優しい! 良い姿勢、したくなって来るでしょう?(笑)」

放っておくと怖い! 腰痛&肩こりが悪化すると……

肩こりや腰痛に悩んであれこれ試している人がいる一方で、“感じない”と思っている人や、ケアを後回しにしている人はご注意を! 放っておくと肩こり・腰痛どころではない症状に突然襲われることになりかねないかも!!


「私のカイロプラクティック院に来院されている患者さんの多くが、肩こりや腰痛に悩んでおられますが、もっとひどい症状に悩まされている患者さんの10人に2~3人ぐらいは肩こりや腰痛を感じたことがない、とおっしゃいます。起きるのがむしろ当然という症状なのに、メンテナンスもしていないのに肩こりや腰痛を“感じない”と思っている人の多くが、体からのSOSサインをキャッチできない、しにくい体質ということになろうかと思います。


肩こりは感じたことがないはずなのに、ひどい症状に悩まされて来院される患者さんの症状は人それぞれです。例えば、腕が上がらなくなるいわゆる四十肩や五十肩になったり、立ち上がろうとして手をつくと手首が痛んだり、指先のしびれがずっと続いていたり……と、大変な苦痛を抱えて来院されるんです。実はうちの父がそういうタイプで、“こんなに痛いなら腕を切り落としたい”と、物騒なことまで言って苦しんでいました。これまで4人はそういうことをおっしゃる患者さんがおられましたね。


腰だともっとわかりやすくて、ぎっくり腰がまさにそれなんです。重いものを持ったからぎっくり腰になった! と言う方がよくおられますが、それはいわば最後のダメ押し。表面張力でギリギリのコップの水がついにあふれるようなものなんです。

ねこ背で座った状態と“椅子の正座”の状態とでそれぞれ座ってみて、背中や腰の筋肉の状態を比べてみるとよくわかります。

“椅子の正座”は、腰の筋肉が柔らかくなる角度を探すので、当然柔らかい(=筋肉にとっては楽な)状態です。逆に、楽だと思われているねこ背座りだと、腰の筋肉はむしろ硬く突っ張ってしまうのです。

楽したくて姿勢を崩していたはずが、かえって体に負担をかけているんです。負担が蓄積した腰で重い荷物を持った結果、ぎっくり腰が引き起こされるというわけです。
怖い話をして脅すようですが、肩こりや腰痛なんてと甘く見ていると取り返しがつかなかったり、リカバリーに長い期間を要したりと、もったいないことこの上ありません。普段から“椅子の正座”で座ることを心がけつつ、エクササイズを歯磨き感覚で取り入れるだけで、そうした事態を未然に防ぐことができるはずです。」

著者プロフィール

碓田拓磨 Takuma Usuda

虎ノ門カイロプラクティック院 院長、カイロプロテクター。早稲田大学在学中に「姿勢と健康」の授業を受講したことをきっかけに姿勢の重要性に目覚める。卒業後、米国パーマーカイロプラクティック大学に留学、ドクターオブカイロプラクティック(D.C.) の学位を取得。2002年に虎ノ門カイロプラクティック院開業、同年早稲田大学保健体育科目「姿勢と健康」の講師就任。“椅子の正座”をサポートする器具ZAGOOを開発、2017年には特許を取得。TV出演、著書、セミナーなどを通して、姿勢の啓蒙活動も積極的に行っている。最新刊は『健康寿命を延ばす 長生き姿勢』(かざひの文庫)。

虎ノ門カイロプラティック院HP https://toranomon-chiro.com

イラスト/和全 撮影/松本裕之 ヘアメイク/佐竹静香 モデル/武居美緒[ジャグラーインターナショナル] 取材・原稿/船津麻子