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- 2022.06.16

座ったままエクササイズ 第1回 「ねこ背リセット」

碓田先生の座ったまま“ねこ背リセット”エクササイズ すべての基本! “椅子の正座”

「人は立っている時と座っている時で、どちらがねこ背になりやすいかを比べると、圧倒的に座っている時にねこ背になりやすいんです。座っている時に背中を伸ばせるようになれば、立っている時は問題なく背中を伸ばせるようになります。まずは、私が提案している正しい椅子の座り方“椅子の正座”を身につけて、美しく見えるだけでなく体にもよい座り姿勢を手に入れてください」

①椅子の前に自然に立つ

あごは自然に引き、肩は前に丸まらないように軽く後ろに引きます。椅子は背もたれがなく、座面がフラットなものを使用するのがベスト。

②手で腰のカーブを確認する

片手を背中側に回し、腰の後ろのへこんだあたりに当てます。立っている時の背中や腰のS字カーブを意識して。足は揃えても軽く開いてもOK。]

③椅子に座る

立っていた時の腰のカーブと同じカーブになるように座ります。

④手で腰のカーブを確認する

片手を背中側に回し、腰がお腹の側に反っているか確認します。

⑤腰の筋肉を強めに押し続ける

両手を背中側に回し、まず背骨を探り当てます。その背骨の左右5mmぐらい脇の筋肉を指先でぎゅっと強めに押し、その硬さを確認します。

POINT

指先で背骨を確認したら、背骨から5mmずつ外側へ。筋肉をギュッと強めに押して、その硬さを感じ続けます。

⑥そのまま上を向く

腰の筋肉を強めに押したまま、ゆっくりと頭を後ろに倒し、上を向きます。

⑦上体を前に倒す

上を向いたまま、足のつけ根から上体を前に倒します。すると、押している筋肉が硬くなるのが分かるはずです。

⑧筋肉がゆるむ位置を探す

上を向いたまま頭を後ろに引いていき、触っている筋肉がフッとやわらかく力が抜けたようになる位置を見つけます。上半身が地面に対して垂直になったサインで、いわゆる“骨盤が立っている”状態です。

意識しないで座ると、骨盤は後ろに倒れがちです。すると背中から腰に掛けて丸まってしまい、その姿勢を続けていることでねこ背になってしまいます。

⑨手を足の付け根に置く

顔を正面に向けます。腕は力を抜き、手のひらを上に向けて足の付け根に置きます。これで椅子の正座の完成!

骨盤が立っている状態で座ろうとすると、多くの人がキツいと感じるそう。キツく感じた人は、まずは1分この姿勢をキープするところから始めて。1日のうちトータル1時間“椅子の正座”で座っていられるようになれば、かなり姿勢美人に近づいているはず!

NG例

途中で腰を丸めないように注意して! 腰は最初から最後まで立っていた時のカーブをキープできるように意識を。

碓田先生の座ったまま“ねこ背リセット”エクササイズ 上半身全体に効く!“キャットレッチ”

「日常動作のほとんどは体の前で行われるので、背中は丸まりがちなのはむしろ当然のことです。背中が丸まるっていると、肩甲骨は開いている状態。これをリセットできるのが、キャットレッチ=ねこ(キャット)背をリセットするストレッチです。肩を目いっぱい後ろに引いて、左右の肩甲骨を背中の真ん中に寄せることは、ねこ背の(丸まった)状態で固まっている背骨を、伸ばすために必要な動作なんです。肩こりで悩んでいる人にも効果大ですよ!」

①椅子に座り、手を腰の後ろで組む

椅子に“椅子の正座”で座り、腰の後ろで軽く手を組みます。息を鼻から吸います。

POINT

手のひらは上向きに。手のひらが下を向くのはNG!

②肩を引く

口から息を細く吐きながら、肩を目いっぱい後ろに引きます。胸を開くように、肩甲骨を背中の真ん中にギュ~っと寄せます。

POINT

左右の肩甲骨の間にレモンを挟んで、そのレモンをギューッと絞るイメージで肩を引いてください。

③そのまま上を向く

肩を十分に引いたらゆっくりと頭を後ろに倒し、上を向きます。手とアゴで引っ張り合うようなイメージで3秒ほどキープし、ゆっくり元に戻します。首などに痛みを感じる場合は、無理のない範囲で。

1日の中で20回ほどを目安にこまめに行うのがおすすめ。デスクワークが長引いたら合間に取り入れるようにすると、背中の丸まりをリセットできます。

NG例

この写真は肩が十分に引けていない例。肩の引きが不十分な状態で頭を後ろに倒すと首を傷める恐れがあります。

この写真は腰を反り過ぎてしまっている例。腰を傷める恐れがあるので、お腹を前に突き出さないように注意してください。

碓田先生の姿勢講座

ねこ背=ネガティブ! 印象を変えるなら姿勢をチェック姿勢というと、子どものころ食事

姿勢というと、子どものころ食事時などに「また背中が丸くなってるよ!」などと叱られてピッと背スジを正す……というような経験をした人も多いのではないでしょうか? 良い姿勢は、“ちゃんとしてなくちゃいけない時”の立ち居振る舞いというイメージがあり、マナーの一環として語られることも少なくありません。でも、姿勢のスペシャリストである虎ノ門カイロプラクティック院院長の碓田先生によれば、姿勢は健康や美容を考えるうえで一番の基本だといいます。

「確かに、“良い姿勢”は、マナーの上でも身につけておきたい素養ではあると思います。“あなた、ねこ背だね”と言われて嬉しい人は、まずいないでしょう。早稲田大学や、以前は放送大学などで姿勢に関する講義をしているので、良い姿勢と悪い姿勢の写真を見てもらい、そのイメージを聞く、というアンケートをずっと取っています。

これまでに数千人に回答してもらっていますが、ねこ背の人の写真を見てポジティブな言葉が出てくることは、まずありません。“暗そう”、“体調が悪そう”、“嫌なことがあったみたい”、“自信がなさそう”……さらには“人生うまくいってなさそう”と回答した学生もいたほどです。それぐらい、悪い姿勢にはネガティブなイメージがあるんですね。

姿勢のいい人の写真を見せると、その真逆の意見が並びます。“明るそう”、“しっかりしてそう”、“かっこいい”、“自信にあふれてる”、“仕事ができそう”など、同じ人でも姿勢がいいとポジティブに映るようです。姿勢良し悪しで、真反対の印象を与えるということですね。加えて“良い姿勢の人と悪い姿勢の人、どちらの人と過ごしたいですか?”と問うと、もちろん“姿勢の良い人”とほとんどの人が回答します。

嫌なことや悲しいことが起きた際の姿をあらわす“肩を落とす”という慣用句がありますが、良い姿勢のまま肩を落とすことはできません。肩を落とそうとすると、実際には肩を前に丸めた状態になるんです。まさに“ねこ背”状態です。ねこ背に暗い印象があるのは、今に始まったことではないんでしょうね。

 また、“後ろ姿に年が出る”というのも昔からよくいわれていますよね。年配の人は背中が丸いというイメージを皆さん漠然と持っているんじゃないでしょうか。年を取るほど背スジがピンとしてくる……という逆のパターンは、あまり聞いたことがありません。丸めた背中=ねこ背には、“老けている”というイメージもあるわけです。

 女性誌などで、若く見える美容テクニックやコーディネート術の特集をよく見かけますが、いくら若く見える努力をしていても、姿勢が悪ければアクセルとブレーキを一緒に踏んでいるようなものです。健康的に美しくありたいと思うなら、ぜひ姿勢も見直してみてください」。

人前だけじゃ意味がない! 悪姿勢は美と健康のブレーキ

ほとんどの人がいいイメージを持っていない、ねこ背。だからこそ多くの人が、人前ではいい姿勢をするようにしているはず。そんな人でも、誰かに見られていなければ、姿勢に気をつけようとはなかなか思わないもの。しかし、“いい姿勢”は誰かのためにするものではなく、自分の体と心の健康のために欠かせないポイントなのだそう。

「私は、姿勢とメンタルバランスは密接に関係していると考えています。その調査のために、50人の学生に次の4つのうち自然と感じるもの・不自然だと感じるものはどれか、というアンケートを取ったことがあります。

 ①背筋を伸ばして、ポジティブなことを言う 例)「今日もがんばるぞ!」

 ②背筋と伸ばして、ネガティブなことを言う 例)「何もかも嫌になる……」

 ③背中を丸めて、ポジティブなことを言う

 ④背中を丸めて、ネガティブなことを言う

当たり前のようですが、ほぼ全員が①と④は自然、②と③は不自然と回答しました。できれば試しに一度、やってみてください。聞かれるまでもない!なんてちょっと怒った学生もいましたが、忙しい毎日を過ごしている皆さんなら、スマホを見ていた休憩時間の終わりに、背中を丸めたまま“そろそろ仕事するか~”と呟く、なんて経験、誰しもあるんじゃないでしょうか。姿勢が悪いまま頑張ろうとしても、気合いが入りづらい不自然な状態だと多くの人が感じているのに、実際には日常生活によくあることなんですね。

 メンタルだけでなく、姿勢は体の健康面にも影響します。例えば、ダイエットと姿勢は関係ないように思うかもしれませんが、私が知っている限りダイエット講師の方で姿勢を軽視する人に会ったことがありません。気合いが入りづらいのはもちろんですが、背中を丸めると胸郭が狭くなるので呼吸が浅くなり、基礎代謝が低下します。脂肪を余分な燃料と考えると、効率よく燃やしたいところなのに、姿勢が悪いと燃焼不良を起こすわけです。体を動かすうえでも、良い姿勢は基本中の基本といえます。

 体への悪影響はそのほかにも、足を組むと子宮につながる子宮円じん帯のバランスが乱れて月経痛が重くなったり、背中を丸めることでバストがきれいに見えないだけでなく、内臓下垂を引き起こしてぽっこりお腹になってしまうなど、悪い姿勢は百害あって一利なしです。

 もちろん姿勢だけがすべてではありませんが、悪い姿勢は心にも体にも不調をもたらす一因になっているのは間違いないでしょう。良い姿勢を保とうとすることは、姿勢をコントロールすることにつながり、ひいては“自分を律する”トレーニングにもなりますから、心身の健康のために、ぜひ多くの方に良い姿勢を身につけていただけたらと願っています」。

著者プロフィール

碓田拓磨 Takuma Usuda

虎ノ門カイロプラクティック院 院長、カイロプロテクター。早稲田大学在学中に「姿勢と健康」の授業を受講したことをきっかけに姿勢の重要性に目覚める。卒業後、米国パーマーカイロプラクティック大学に留学、ドクターオブカイロプラクティック(D.C.) の学位を取得。2002年に虎ノ門カイロプラクティック院開業、同年早稲田大学保健体育科目「姿勢と健康」の講師就任。“椅子の正座”をサポートする器具ZAGOOを開発、2017年には特許を取得。TV出演、著書、セミナーなどを通して、姿勢の啓蒙活動も積極的に行っている。最新刊は『健康寿命を延ばす 長生き姿勢』(かざひの文庫)。

虎ノ門カイロプラティック院HP https://toranomon-chiro.com

イラスト/和全 撮影/松本裕之 ヘアメイク/佐竹静香 モデル/武居美緒[ジャグラーインターナショナル] 取材・原稿/船津麻子